エンゲージメント向上
昨今、「離職率が増加している」「コロナ禍で社員教育もこれまで通りにはいかなくなり、どう自社の社員教育や人材育成を進めていけばいいのかわからない」といった課題をたくさん伺います。 ここで注目したいのが、実際に教育を受ける側はどんな考えを持っているのかという視点です。
かつての年功序列や終身雇用などは、昔話となった今、1社に就社するという感覚はなく、「終身雇用」という言葉など若者は信じていません。逆に、ビジネスパーソンとしていかに成長できるか、極端に言えば、今の会社が無くなったとしても、自分の力で生きていける、活躍できるという力を身に着けられるかどうかという視点で会社を見ています。かつては、成長思考の強い人だけが持っていたのかもしれないこの思考も、今となっては、誰もが切実に持っている重要ファクターであり、その結果、自分にとって、よりキャリアアップができる場所を探して、転職するのが当たり前の価値観となりました。
つまり今、社会で生き抜くために「学びたい」、「学ぶ必要がある」と考える人は増えているということなのです。しかし、社会としては労働人口そのものも減少傾向にあることで、企業側が教育に割く時間やコストが減少しています。その結果、成長・学びを「個人に任せる」といった状態が増えているのです。例えば、福利厚生の一環として「学びたい人が自由に学ぶ“教育の場”」を用意するケースなども「個人に任せる」の一つの形ですね。そして、OJT以外の「教育の場や環境」が社内にはほぼなく、学びたい社員は自分で会社の外で学ぶといった状況になっている企業もあります。
一見、この“自ら、自発的に学ぶ人”が増えるのは良いことのように思えますが、企業側の視点に立つと、実はここには大きなリスクが隠れているのです。
社内に、「学ぶ」「自分を成長させてくれる」環境がないということは、実はそのまま「離職」の原因になっていると考えています。企業が社員の成長を社員に任せ、「学びたい人は自分でどんどん学んでくれればいいよね」という状態にしてしまうと、社員は社外に学びの場を求めるようになります。
この時、社員が学ぶ理由は、「今のチームで成果を出すため」ではなく「自分のため」です。その結果、自分が所属している組織、企業の成長の方向と同じ方向に向いた学習になっていないケースも多くなります。もちろん、自分が学んだことと、組織の成長の方向性、チームから求められることが、たまたま合致して成果が出せるという状態なら別ですが、そうでない場合、すぐにでも学んだことが活かせる、より良い環境に転職するというのは自然な流れなのではないでしょうか。
また、実際にはそうは言っても今、目の前の仕事をこなし給料をもらえていればいい、自分で新しく何かを学ぶ必要性を特に感じないという方もいらっしゃるかと思います。ですが、こういった方も、漠然とした不安は常に持っています。身近な先輩や上司の姿を見て将来の自分の姿を想像したときに、その姿が魅力的でなければ、環境を変えようと考えるかもしれません。
また、そういったことは考えず、とりあえずそこにいるだけ、現状維持という方も出てくると思います。自ら学び、成長しようという社員が減り、そうでない社員が残った企業の成長は、やはり鈍化していくのではないでしょうか。
宇田川
なぜこの問題は起きるのでしょうか、根本的には何が問題なのでしょうか。荻野
大きくは2つあると考えています。まず1つ目は「社員教育の重要度が低い」です。今の管理職層の年代を見ると、高度経済成長期やバブルの頃にプレイヤーとして活躍していた方がやはり多いですよね。この時代は、経済成長というバックグラウンドもあり、当たり前のことをちゃんと普通にやれば、ある程度の成果を得られた時代でした。
そういった時代に、「見て盗め」「背中をみて覚えろ」というスタンスで育てられてきた世代にすれば、「人って勝手に育つもの」「自分で成長していくもの」という感覚が大きいのだと思います。例えば教育はOJTでしっかりやっています!と言っていても、実情は「見て、やってみて、体で覚えろ」みたいな形になっていて、やはり「教育」はしていないんですよね。こういった「現場でやってみて体で覚える」で育った人たちが管理職になった結果、教育する側の上司と、先ほど話したように「仮にこの会社がなくなっても生きていけるビジネスパーソンに成長したい」と感じている今の若手の間で、「教育に対する考え方」が合致しないという問題も同時に起きているんじゃないかと考えています。
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荻野
2つ目は「経営戦略としての人事戦略がない」ということです。どういうことかと言うと、人材育成を経営戦略の一環としてとらえている経営者、企業が少ないということです。最近では当たり前に使われるタレントマネジメントという言葉もここ2・3年くらいで認知されてきたもので、少なくとも10年前にはありませんでした。
「人的リソースを活かし、育てていくことが経営においても大切だ」ということを認識している企業がまだまだ少ないことも要因の一つだと思います。とはいえ、タレントマネジメントシステムを導入している企業も増えてきていますし、こういった考えが必要だと感じている企業が増えてきているのは良い流れですよね。
宇田川
経営戦略における人事戦略を持っていない企業が多いというのは確かにと感じました。では、人事戦略を入れるとは具体的にどういうことなのでしょうか。荻野
そうですね。まずこの人事戦略という言葉をもう少し具体的にすると、企業が目指すビジョン、成長の方向性から逆算して、どういった人材が必要なのかを考えるということです。漠然とこういう人材が必要です。とか、これくらいの人員が必要になるので採用を強化しましょう。みたいな話ではなくて、まず、組織として目指す方向性やビジョンを明確にし、そこに向かうためには社員の成長は必要不可欠なわけなので、どんな能力を持った人が必要なのかという視点で整理します。
この能力という部分がポイントで、ただ○○というスキル、資格を持っているという視点だけでは意味がありません。3つの視点で整理することをおすすめしています。
まずは、スタートとなる目指す姿、実現したいビジョンについて整理してみましょう。ここは本当に重要で、教育制度を作ろうとなると、まずは「いま」起きている課題を解決するためという思考に行ってしまいがちです。いま出血しているところを応急処置するという感じですね。
例えば、いま「若手の育成に困ってるから、コーチングの研修をする」とか「ハラスメントの問題があったからハラスメント研修をしないといけない」など、、これは「いま」の話ですよね。
もちろん、「いま」の問題解決は大切ですが、社員教育そのものを考える時に常に「いま」からスタートしてしまうと、その場限りの教育になってしまう可能性が高いです。
「いまの出血を止めるため」だけでなく、「健康な体をつくるため」には、何を改善していかないといけないのかと言う視点を持つこと。つまり、「将来」どんな会社として存在し続けたいのか、そのために「どんなビジョンを実現したいのか」という目指す姿を整理していくことで、未来の企業成長のために必要な効果的な教育制度を作ることができるのです。
未来に実現したい姿を明確に整理できたら、次はその姿を実現するために必要な求める人材像を整理していきます。いきなり、どんな人材が必要かと考えると難しいので、3つの視点で整理することをおすすめしています。
よくある失敗のケースとして、社員教育を考える時、最初の要素の「知識・スキル」や2つ目の要素の「仕事の進め方」に偏った内容になったり、それだけで終わってしまうということがあります。ここだけで終わってしまい、土台となる「あり方や価値観」がずれてしまっていると、いくら素晴らしい知識、スキルを持ち素晴らしい仕事の進め方ができても別の方向にいってしまいます。
よく詐欺師を例に出してお話するのですが、仮に、高い知識・スキルをもって、上手な仕事の進め方ができても、土台となる考え方が「人を騙してでも自分が得をしたい」といったものだと、詐欺のような悪い方向に使われることになってしまいます。もちろんこれは極端な例ですが、土台となるあり方、考え方、価値観についても求める人材像を描き、その要素も教育していくことで、こういったずれを防ぐことができます。
そして、この3つの視点で整理する際に最も大切なのが「具体性」です!知識・スキルは具体的になりやすいですが、仕事の進め方や考え方、価値観も、具体的であればあるほど、「求める人材像」が共有しやすく、目指しやすいものとなり、更には現在の姿とのギャップも明確になります。
ここまで整理できたら、あとは、その人材を育てるのに必要な教育プログラムを作り、実施していけば、「未来の企業成長に必要な人材が育つ環境」を作ることができます。
おすすめの進め方は、まず最初に「会社全体としての共通のもの」を作り、その後、部門や役割など階層別に整理をしていくやり方です。
弊社では、オンライン教育システム「Smart Boarding」というサービスを提供しているのですが、ここまでお話してきた教育制度をつくるプロセスからサポートしています。システムを提供するだけでなく、会社としてどんな姿を実現したいのか、そのための求める人材像とはどういう形なのかと言う部分からお伺いし、一緒に整理させて頂くことができるというのが、強みだと考えています。
【資料DL】ありたい会社の姿から考える社員教育「Smart Boarding」
ここまでお話してきたように、企業が目指す姿、ビジョンから逆算した求める人材像を整備していくことで、企業が目指す方向性と一人一人の社員に求められている成長の姿が具体的になります。そしてこの成長を実現するための学ぶ環境、教育制度を構築していくことで、企業が目指す成長の方向性と社員の成長がつながり、社員一人一人が自発的に学び、組織も共に成長するという状態が実現します。
教育制度がないからと言って、いきなり「今年から若手向けに○○という研修を始めます」「管理者は四半期に一度管理者研修を行います」といったところで、受講者側からすれば「なぜこの研修が必要なのか」「この研修を受講することでどういった成長を求められているのか」がわからず、受け身の姿勢での受講となってしまいます。
結果、せっかく素晴らしい研修があったとしても、そこで学んだことが現場で活かされないということが起こるのです。
自分の所属する組織・チームが将来目指していることを実現する為に、自分にどういった成長を期待されているのかがわかり、それによって、どういった評価がされるのかというところまで明確になることで、主体的に自ら学ぶ文化が醸成され、教育制度が効果的に機能するのです。
宇田川
お話を聞いていて、チームの成長と自分の成長がリンクして、=自分の評価に繋がるとなると頑張れますよね。ちなみに実際にここまでお聞きしてきたことを実践する際に、重要なポイントとか、上手く進めていらっしゃる企業様の事例があればお伺いしたいです。荻野
そうですね。重要なポイントはいくつかあります。
先ほども少し話しましたが、弊社ではSmart Boardingというオンライン教育システムのサービスの一環としてここまでお話してきたことを一緒に進めたり、より深く企業様に入りこんでコンサルティング行うサービスがありますが、そのようなサービスを通じて様々な企業様と接している中で、まず1つ目は、「現場の意見が吸収され、反映されている」と言う点です。
やはり教育制度を作っていく上で、現場からの声は欠かせません。現場は常に変化していますし、一番リアルだからです。教育は人事が主役ではなく、その教育を受講する社員が主役です。人事としては、リアルな現場の声を吸収する努力をする必要があります。現場の協力を得るために、会社としてこれが社員にとっても非常に重要なんだということを発信していくことが大切です。そして2つ目は、「完璧を目指さず、まず始めるという柔軟性を持っている」という点です。
教育制度は作って終わりではありません。企業の成長、社員の成長と共に一定期間で見直しを行い、常に改善していく必要があります。その前提に立った時に必要なことは「まず始める」ということ。完璧なものを目指して、中々スタートできなければ、結局何も生まれません。全社共有の部分だけ、重要部門だけ、一つの階層だけ等、部分的にでもまずは始めてみるのが大切です。
宇田川
なるほど。ちなみに、逆に上手くいかない企業の特徴なんかもあったりするんですか?
荻野そうですね。もちろん先ほど話した2点の逆。つまり、現場の意見を反映せず、人事や経営者だけの考えで進めてしまったり、すべてを完璧に作ってからスタートさせようといった考え方だと、うまくいきません。
が、これとは別の視点で言うと、運用のルールを決めていないということがあります。
先ほどお話した「作って終わり」という部分にも通ずるのですが、運用のルールを決めないままだと、結局形だけで、上手く活用されないという問題が起きてきます。実際にどう運用していくのか、管理はどうするのかといった点も含めてしっかり検討し、ルールを決めることが大切です。例えば、ある企業様は自社の評価制度に組み込んで、教育と評価を連動させて運用していたりもします。
宇田川
ここまでのプロセス、ポイントなどを踏まえて、実際に教育制度を作るうえでオンラインをおすすめされていると思うのですが、なぜなのでしょうか。荻野
これまでの日本企業の社員教育の定番はやはりOJTです。つまり現場での教育、この現場教育で多く出ている問題の解決がその理由です。よく伺うOJTの2大問題が、この2つなんですが、
荻野
これって従来のやり方だと、どうしても起きてきてしまう問題なんですよね。やはり教えるのがうまい人が、全員を常に教えるわけにもいかない。また、プレイヤーとしても非常に優秀な社員が、部下に何度も何度も同じことをできるようになるまで教えるために工数を奪ってしまう。
ですが、オンラインとリアルを併用した教育制度にしていくことで、この問題も解決できるし、様々なメリットがあることに気づいたんです。
オンラインのメリットは次の4つだと考えています。
時代の流れによって、対面、手紙、電話、メール、WEB動画など、方法は入れ替わったりなくなったりしたわけではなく、加わってきたと考えています。実際どの方法も今なお使ってますよね。
付箋のように、紙に書く方がいい時もあるし、実際にリアルで伝えた方が熱が伝わる時もある。同じように考えると、例えばロープレはzoomでやった方が、録画もできるし、後で自分の映像を見直すこともできます。それぞれのメリットがある部分はその方法を活用していった方が効果的で、教育制度を作る上では、上記のようなポイントにおいてはオンラインが非常に効果的だと考えています。
ここまでお伝えしてきたことを実際に実現しようとなった時に、人事のご担当者様や経営者様から伺うお悩みとして「進め方はわかったけど、実際に求める人材像を整理するとなると大変、そこからサポートしてほしい」「教育制度を作ってから進めていくとなると、どうなるか不安。その後も相談できる場が欲しい」といったお声を多く頂きます。
弊社のオンライン教育システムSmart Boardingでは、ただ教育システムを導入してもらって終わりではなく、求める人材像を描くサポートを含め、今回お話した部分を整理するところから伴走することができます。それが、人材育成、研修会社である弊社がオンライン教育システムを提供する意義なのです。教育制度がないことにお悩みがある場合は、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
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