エンゲージメント向上
チーム・組織づくり
「ストレス」という言葉は、元々物理学で使われていた用語です。物体に対して、外側から圧力がかけられた際に歪みができる状態をストレス状態といいます。私たちは、日々の生活の中で外部から受けた刺激に反応し、それにストレスを感じます。この外部刺激、ストレスの原因となる刺激を「ストレッサー」、そしてストレッサーの刺激によって引き起こされる反応を「ストレス反応」といいます。
近年は、少子高齢化や人手不足による負担増加といった問題に加えて、新型コロナウイルス感染症や、それに伴う経済状況の悪化といった大きなストレスが社会全体にかかっている状態です。このような状況下で、健全な心と身体を保ちながら社会生活を送るためには、ストレスマネジメントが大変重要です。
ストレスマネジメントに取り組むためには、まず自分のストレスが”何が原因で発生しているものなのか”を正しく理解することから始めましょう。ストレスの正体を知ることが、最初の一歩となるのです。
私たちの心、そして身体に影響を及ぼすストレスの原因になるものには、大きく3種類あります。
科学的ストレッサーには、薬物や公害物質、大気汚染の影響のほかに、栄養不足や酸素の欠乏や過剰、一酸化炭素などがあります。酸素や栄養などの過不足は自分たちの意思次第でコントロールできるものの、私たちを取り巻く環境の中に存在する化学物質を簡単に取り除くことはできません。
こういった化学物質は、実際に私たちの身体に多大なる影響を及ぼしており、それを化学的ストレッサーといいます。
物理的ストレッサーとは、気温や騒音、照明などといった環境刺激のことを指します。例えば、太陽光や照明が眩しいと感じたり、暗いと感じたりすることも、物理的ストレッサーです。「オフィスや学校の環境がうるさい、静かすぎる」「エアコンが効きすぎている、弱すぎる」といったものから、「パソコンやスマートフォンのディスプレイを見すぎてしまう」といったものまで、これらは全て物理的ストレッサーに分類されます。
騒音に関しては、電車や車、飛行機の音や、工事現場の音といった外的要因が主な原因となります。
仕事の重圧や多忙さ、人間関係が原因となる「心理・社会的ストレッサー」は、社会生活を営む上で直面することが多いストレッサーです。職場や学校などの人間関係や家庭のトラブル、仕事上の問題などが心理・社会的ストレッサーの代表格とされています。私たちが日常的に「ストレスだ」と口にするものの多くは、心理・社会的ストレッサーに当てはまるのです。
心理・社会的ストレッサーはライフイベントのタイミングで生じることが多いのも特徴です。例えば結婚や出産などのポジティブなライフイベントであっても、それがストレッサーとなることもあり得るでしょう。ポジティブな理由であっても、ライフイベントが原因となって取り巻く環境や状況が変化すれば、それに対応するためのエネルギーが必要となります。そのエネルギーを費やすこと自体が、ストレスになる可能性もあるのです。
こうしたストレッサーによる刺激を受けた際に起こるストレス反応には、以下のような大きく3つに分類することができます。
だるさや疲労、めまい、食欲不振、不眠、動機、頭痛など
集中力低下、不安、イライラ、うつ、落ち込みなど
生活の乱れや過食、暴言暴力、遅刻・欠勤、作業能力低下など
ストレッサーに反応して、ストレス反応が起こることは正常です。しかし、このような状態が慢性化してしまうと、身体疾患や精神疾患を引き起こすきっかけとなってしまうため、注意が必要です。
また、ストレス反応は自覚できても、その要因であるストレッサーにはなかなか気づきにくいということもあります。ストレス反応が起こったとき、その要因を自分で把握することも重要なポイントになるでしょう。。
ストレスマネジメントとは、ストレスに対して適切な対処をしながら、上手に付き合っていくことを意味します。ストレスは、日常的に生活していれば、どんな人でも受けてしまうものです。
それらにうまく対応していくためには「自分のストレスの存在に気づくこと」、そして「ストレスに対する具体的な対処法を知り、実践していくこと」が重要になります。少しでもストレスを軽減し、安定した心で日々を過ごすためには、ストレスマネジメントは必要不可欠なのです。
ビジネスシーンは、ストレスマネジメントが最も重要視される場面の1つです。人は働く上で、社内外問わず複数の方とのコミュニケーションを取ることがあります。また、これまでに経験がないことへの挑戦や、新たな役割を与えられることなど、プレッシャーを感じるような場面は多いでしょう。
ここ数年、新型コロナウイルス感染症の影響で、職場環境が激変した人も多いと思います。テレワークの普及などで、それに付随する仕事の変化はこれまで経験したことがないほど大きなものとなりました。そのような中でも、従来の働き方と同様の目標達成を求められている方も多いのではないでしょうか。
変化を楽しむことができる人もいる一方で、変化に対応することで少なからずストレスがかかる人は多いと思います。それらとどのように関わっていくか考えることが重要です。
しかし、何をストレスと感じるかは人によって異なりますから、自分がストレスに感じているからといって、上司やチームメンバーも同じように感じているわけではありません。お互いのことを理解した上でサポートできる環境を整え、ストレスマネジメントを実施していく必要があります。
ストレスは、時に人を攻撃的にすることがあります。そのような人が一人でもチーム内にいると、職場の雰囲気は悪化してしまいます。一方、健全な心身を保っているメンバーが周囲にいると、その状況を改善させることが可能です。
また、ストレスを抱えることによって、モチベーションを保つことが難しくなり、業務パフォーマンスの低下、遅刻や欠勤を招く恐れもあります。メンタルヘルスを崩した一人の社員がきっかけとなって、周囲のメンバーにまで影響を及ぼすことがないように、ひとり一人がストレスマネジメントを実施することが重要です。
チームメンバーがそれぞれ、自身のストレスマネジメントを適切に行うことができるようになれば、職場の環境はより良くなることでしょう。
ストレスは、あまりにも積み重なってしまうと精神にまで影響が出て、身体の調子まで崩してしまいます。そのまま放っておいてしまうと、自律神経失調症やうつ病といった病気に繋がってしまうこともありますので、注意が必要です。
うつ病は、ストレスを感じ続けていることが原因で、脳内の神経伝達物質が崩れてしまい、うまく脳が機能しなくなってしまう状況を指します。発症すると、理由もなく落ち込んだり、憂鬱になったり、ネガティブにしか物事を考えられなくなったりすることがあります。場合によっては、だるさや不眠といった身体の健康にまで影響をきたすこともあります。
少しでも「おかしいな」と感じたら、趣味やリラックスできる時間をつくるなど、すぐにストレスを軽減するような工夫をしてみると良いでしょう。適切なストレスマネジメントを実施することで、ストレスが積み重なることがなくなり、心身共に健やかな状態を保つことができるようになります。
コミュニケーションがうまくいかない原因は、送り手側の情報が曖昧であることや、受け手側が相手の言葉を正確に受け取らず、思い込みで解釈してしまうことにあります。仕事におけるコミュニケーション・エラーは、業務に多大なる影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要です。
ストレスの感じ方は、人によって異なります。自分がストレスとは感じないようなコミュニケーションの取り方であっても、相手にとっては大きなストレスとなることがありますし、その逆も起こり得るということを理解しておきましょう。
ストレスマネジメントを実施し、自分と相手の感じ方をすり合わせていくことで、より円滑なコミュニケーションが可能となり、コミュニケーション・エラーを防げるようになります。
ストレスマネジメントを導入するには、どのような方法があるのでしょうか。大きく分けると以下の2段階に分かれています。
①セルフモニタリング
②ストレスコーピング
では、それぞれについて詳しく見ていきます。
セルフモニタリングは、言葉の通り「自分の状況をよく観察する」方法です。具体的には、自分の気分の変化や日々の体調を、継続して記録することを指します。自分自身を客観視することで、ストレスを感じやすい場面や、その時にどういったストレス反応が生じるか、心身にどういった影響を及ぼすかなどを理解できるようになります。
そして、自分のストレスや、不調について客観的に分析できるようになることは、気持ちを楽にすることにもつながります。
ストレスコーピングとは、ストレッサーやストレス反応による負担を軽減するための対処法です。具体的には、以下のようなものがあります。
では、それぞれどのようなものか具体的に解説致します。
問題焦点型コーピングは、今直面している問題や状況を正しく理解し、直接的解決を目指して、具体的な対策を立てるアプローチです。例えば、問題となっているのが職場を取り巻く環境であれば、環境を整えるように働きかけたり、周囲とコミュニケーションをしっかりと図ったりすることが挙げられます。
情報焦点型コーピングとは、ストレスとなっている問題そのものの解決ではなく、問題に対する自分の考え方や感じ方、気持ちの持ち方などを調整する対処法です。例えば、何かトラブルが発生した時に、マイナスの側面だけではなく、プラスの側面に注目するようにすることです。それだけでも、感じ方が大きく変わってきます。
また、周囲にいる誰かに自分の気持ちを正直に話して、感情を吐き出すのもひとつの方法です。代表的な例としては、自己主張して相手に気持ちを伝えるアサーションや、自分の物事の見方を変えて、違った視点からポジティブに解釈するリフレーミングなどの取り組みなどが挙げられます。
ストレス解消型コーピングは、ストレス反応そのものに対処するアプローチです。心身の疲れを取り除き、発散する方法を指します。代表的な例としては、ストレッチ、適度な運動、適切な睡眠、自律訓練法などが挙げられます。趣味の時間をとることや、最近人気のマインドフルネスヨガなども効果的な手段の1つです。
ここでは、実際の例をもとに、ストレスマネジメントの具体的な方法をご紹介します。
セルフモニタリングを始める前に、まず付箋とシャープペンシルなどの筆記用具を用意します。付箋に最近ストレスだなと感じた場面や、現在抱えているストレス、ストレスを感じて困っていることなどを細かく書き出してみましょう。
この作業を行うことで、以下の点を確認することができます。
記入例は以下のようになります。
【ストレスを感じた状況】
仕事について何か依頼をされた時
【ストレッサー】
業務に対する期待やプレッシャー
【ストレス反応】
暴飲暴食に走るなどの行動的反応や、不眠といった身体的反応、塞ぎ込んだなどの心理的な反応など
ストレスの正体やその原因、ストレスに対する自分の反応が理解できたら、ストレスコーピングを検討します。「これをすれば問題解決できるだろう」「この作業をしたら、気分がよくなるに違いない」という行為を、思いつく限りリストとしてまとめてみましょう。
【問題焦点型コーピング】
・スケジュール管理方法を見直す
・請け負う仕事量について見直し、調整を依頼する
【情動焦点型コーピング】
・信頼されているからこそ、大変な業務を任せられていると考える
・自分が挑戦したことがないこと経験する、成長のための良い機会であると考える
【ストレス解消型コーピング】
・音楽を聴きながら入浴する
・マッサージを受ける
・睡眠時間を7~8時間とる
・ヨガやストレッチをする
コーピングには、さまざまな方法があります。「この方法が正解!」というものではありませんから、自分に合うと思ったコーピング方法を選んでください。また、大切なのは一人で実施するだけではなく、上司や仲間をよき理解者とすることです。抱えている問題や悩みを相談し、理解を得た上で導いてもらうのも効果的な方法と考えましょう。
ストレスマネジメントの手法は理解できても、実際には、自分だけでストレスとなっている問題や課題を解決できないという場合も多いと思います。
そのような時は、医療機関や専門家に相談し、アドバイスを受けるのもひとつの方法です。いつでも相談できる機関があると知ることは、心のゆとりに繋がります。ストレスを抱え込みすぎてパンクすることがないように、あらかじめ備えておきましょう。
身近な家族や友人、上司、同僚への相談はもちろんですが、本当に辛くなった時に自分の状況を理解してくれている専門家がいるというのは、大変心強いものです。厳しい状況に追い込まれてから相談先を探すと、自分の状況を冷静に伝えるのも難しくなりますから、お守り的な存在として身近な相談先を探しておくのも良いでしょう。
好きなことをしていると、人は時間を忘れて夢中になることができます。必ず毎日1時間は、好きなことに没頭する時間を確保するなど、プライベートの充実を図ることも重要です。
「忙しくて趣味を見つける暇もない」と思う人もいるかもしれませんが、仕事だけで生活を埋め尽くしてしまうと、いざ仕事がストレッサーとなった時に逃げ場がなくなってしまいます。自分の好きなこと、リラックスできる時間を見つけて、日頃から意識してそういった時間をとるようにしましょう。
「自分のために時間を使う」ということは、簡単なようで、忙しいビジネスパーソンにとって難しいものでもあります。ただ、敢えて行うことでオンとオフが明確になり、リラックスしてストレッサーから解放される時間を手に入れることに繋がるのです。
ストレスマネジメントは日々健やかに過ごすためのちょっとした技術
ほとんどの人は、日々なんとなくストレスを感じながら生きているかもしれません。しかし、考え方ひとつで状況は大きく変わります。「どうせ何をしても、大して変わらないだろう」と思ったとしても、自分の意識や行動を少しずつ変えてみてはいかがでしょうか。
また、「ストレスはない」と思っている人も、定期的にストレスチェックなどを行い、日々のストレス度を把握することをお勧めします。仕事においては、担当業務のすべてを完璧にこなそうとするのではなく、優先順位をつけて上手に取り組むなど、工夫してみると良いでしょう。日常におけるちょっとした工夫で、より健やかな日々を実現することが可能になります。
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