チーム・組織づくり
組織開発
「イノベーション」とは、ビジネスにおけるサービス・モノ・仕組み・ビジネスモデルなどに、従来とは異なる新しい価値観・技術をとり入れ「革新・変革」を起こすことを指します。
モノやサービスが溢れる現代社会で企業が生き残っていくためには、他社とは異なる存在意義や価値を生み出していかなければなりません。そのために必要となるのが、他社との差別化を図るための「イノベーション」なのです。
この「イノベーション」という概念は、オーストラリアで誕生しました。イノベーションを定義したのはオーストリアの経済学者、ヨーゼフ・シュンペーター(1883年〜1950年)という人物です。シュンペーターは、1912年の著書でイノベーションという言葉を「経済活動の中で生産手段・資源・労働力などを、従来とは異なる方法で新結合すること」と定義しています。現代社会では慣習や常識に捉われない、変革的・革新的な取り組みとして用いられることが多いです。しかし、ただ闇雲に「新しいことにチャレンジする」というだけでは、本物のイノベーションを実現するのは難しいでしょう。
変革を起こすためには、イノベーションの意味や定義を正しく理解し、必要な工程を確実に踏んでいくことが重要です。
シュンペーターは「イノベーション」を5つの種類に分類したうえで、それぞれ次のように定義しています。
プロダクト・イノベーションは消費者・同業他社などが全く知らない新しい商品やサービスを生み出すことを意味する言葉です。
プロダクト・イノベーションには、全く新しい製品を創出する「商品イノベーション」と全く新しい性能・機能を実現するための部品や素材を生み出す「部品・素材イノベーション」の2つがあります。さらに、それぞれのプロダクト・イノベーションを起こすためのアプローチ方法にも下記4つの選択肢があるのです。
(1)ニーズ主導型
(2)技術主導型
(3)類似品型
(4)商品コンセプト型
自社の規模や戦略によって、とるべきイノベーションのアプローチ方法も異なってくるため注意しなければなりません。
プロセス・イノベーションは文字通り、全く新しい工程・生産・流通方法を創り出し導入するイノベーションです。上記のプロダクト・イノベーションが「製品の変革」に焦点を向けているのに対して、こちらのプロセス・イノベーションは「工程や流通方法の変革」に意識が向けられています。
製品自体の品質や性能は維持しつつ、生産工程・流通方法を革新的な手段で改善することで、従来の工程では実現できなかった生産性の向上・売上の向上が期待できます。近年叫ばれているDX推進による生産性・業務効率化も、プロセス・イノベーションの一つといえるでしょう。
マーケット・イノベーションは新しい市場に参入し、従来とは異なるニーズ・顧客・販路を開拓・獲得することを意味するイノベーションです。自社の製品や生産工程ではなく、ターゲットとする市場を見直すことで、組織のさらなる可能性にチャレンジすることができます。
例えば、不動産会社が小売店や飲食店事業を展開する、ホームページ制作の会社が、配達業務に参入するなどです。基本的に、既存事業のノウハウやスキルを活かして事業展開を行うケースが多いですが、場合によっては新事業のノウハウ獲得からスタートしてマーケット・イノベーションを起こす企業も珍しくありません。
従来とは異なるニーズを満たすために事業やターゲットの方向性を見直す戦略を幅広く「マーケット・イノベーション」と呼びます。
サプライチェーン・イノベーションは、自社製品の生産に必要な部品や原材料を仕入れるための新しい供給源の発見・獲得を意味するイノベーションです。また、製品を顧客に届けるための配送方法の見直しなど、流通方法に関わる改革は、総じてサプライチェーン・イノベーションに該当します。
例えば、国産の素材のみで原料を仕入れていた会社が、新たに海外から同品質の原料を仕入れ始めたり、これまで自社スタッフで配達を行っていたファストフード店が、配達サービスに委託して消費者に料理を届けるようになったりすることも、サプライチェーン・イノベーションです。
大規模になると自社だけに止まらず、メーカーや卸業者・小売店と連携してイノベーションを起こすケースもあります。
オーガニゼーション・イノベーションは、組織のシステムやビジネスモデルの変革・実現を意味するイノベーションです。トップダウン式からボトムアップ式への変革など、組織運営の在り方を根本から見直すことを総じて「オーガニゼーション・イノベーション」と呼びます。
シュンペーターが定義した、5つの理論とは別の側面から、イノベーションを表現するケースもあります。
ハーバード・ビジネススクールで教授を務めていた「クレイトン・クリステンセン」が書いた著書「イノベーションのジレンマ」(1997年)では、イノベーションを「破壊的イノベーション」と「持続的イノベーション」の2つに分類して提言しているのです。それぞれのイノベーションについて詳しく解説いたします。
破壊的イノベーションとは、現状ある業界のルールや仕組みを破壊して全く新しい構造を再構築するイノベーションモデルを指します。この破壊的イノベーションには「新市場型破壊」と「ローエンド型破壊」の2種類があり、型によって市場に及ぼす影響が異なります。
新市場型破壊的イノベーションは、現在ある市場を根底から覆し、革新的な変革を起こすイノベーションです。代表的な事例としては、デジタルカメラが挙げられます。もともとは、フィルムにより現像していたカメラ業界にデジタルカメラが登場したことで、写真は全てデータ化されて現像の必要性もなくなり、カメラ市場は大きく変化しました。
これまでの文明の変化を辿っていけば、このような新市場型破壊のイノベーションは数えきれないほど発生しています。そろばんから電卓、コンピューターからOS、2Dゲームから3Dゲーム、書籍から電子書籍など、今ある技術や製品は各社が起こした破壊的イノベーションの先に成り立っているのです。
ローエンド型破壊的イノベーションは、一般的に「価格破壊」と呼ばれる、安さで業界を覆すイノベーションを指します。消費者は必ずしも高機能・高価格な商品・サービスを求めているわけではありません。
最低限の機能や性能に抑える代わりに、既存商品よりもコストを抑え圧倒的な低価格で提供することで、イノベーションを起こす方法です。また、低コストなまま品質の改良を繰り返すことで、ハイエンドを求める消費者さえ取り込むことができるようになります。
大手企業などで、用いられやすいのが持続的イノベーションです。持続的イノベーションは、破壊的イノベーションの対義語にあたる概念で、既存ニーズに耳を傾けながら、既存の製品やサービスをよりよく改善・改良していくイノベーションを指します。
持続的イノベーションは、売上や顧客獲得の安定性に優れる反面、破壊的イノベーターが登場した際に、売上の減少や事業からの撤退を余儀なくされるリスクもあるため注意が必要です。
企業や市場に大きな変革を起こすイノベーションですが、近年は特に多くの注目を集めていることをご存知でしょうか。今の社会でイノベーションが注目されている背景には、大きく分けて4つの理由があります。
イノベーションに成功すれば、経済的効果を得られるケースは非常に多いです。もともとサービスやモノが溢れる現代においては、売上向上のために常に新しい製品やサービス・仕組みを探し続けることは企業の本質でもあるでしょう。
新たな取り組みや革新的な生産方法の確立によって潤うのは企業だけでなく、従業員の負担も軽減するケースが多く、双方にとって大きなメリットが得られる可能性は高いです。
近年では業界・業種を問わず「人手不足」が深刻な問題となっている企業が多いです。その中で、ITやAIを活用した新しい生産工程・生産方法を創出できれば、人手不足の解消はもちろん、業務の生産性向上も期待できます。
特にIT技術を活用できていなかったローカルな業界でイノベーションを起こし、革新的な生産方法を確立できれば、業界での優位性を獲得することも可能でしょう。
イノベーションとはすなわち、ブルーオーシャンの開拓であり、新たな市場の獲得は大きな経済的成長を与えてくれます。既存の市場では大手と戦えない中小企業や個人事業主などにも、等しく同じチャンスが秘められており、イノベーションにより新市場を独占できれば、今後の事業発展に大きな影響を与えることになるでしょう。
国内外を問わず、ビジネスにおける市場競争は企業の成長を左右する重要な要素です。市場でイノベーションを起こし、優位性を獲得できれば、新規顧客やリピーターの増加が期待できるでしょう。また、自社のブランディングにも大きな効果が期待できます。新技術の特許などを取得して活用できれば、国内外の市場でも優位性を獲得することも夢ではないでしょう。
ビジネスの世界において「イノベーション」という言葉は頻繁に用いられます。しかし、イノベーションの概念は各国の学者によって、多種多様な見解が出されており、企業によって用いる考え方もさまざまです。その中で、イノベーションに関連する代表的な用語を3つご紹介します。
オープンイノベーションは、ハーバード大学経営大学院教授のチェスブロウが提言したイノベーションの概念です。自社内の資源やリソースだけでなく、他産業や他施設など外部と連携を行い、より広範囲に影響を及ぼす変革を指します。
他産業や外部のノウハウや資源を組み合わせることで、自社内だけでは実現不可能なビジネスモデルや業界の変革を生み出せる可能性も出てくるため、各産業の発展のために重要な要素の一つといえるでしょう。
オープンイノベーションと対をなす概念となるのが、クローズドイノベーション。こちらも同じくチェスブロウが提言した概念で、新技術・新体制などの研究から開発までを一貫して自社内で行って起こす変革を指します。
昔は、自社内で変革を生み出すのが主流でした。しかし、インターネットが普及し情報化社会になった現代においては、社内だけでの変革は困難であり、オープンイノベーションにシフトしている企業がほとんどです。
ソーシャルイノベーションは、イノベーションの父と呼ばれるピーター・ドラッカーが提言した概念であり、社会問題を解消するための革新的なイノベーションを意味する言葉です。日本語で「社会変革」と呼ばれることもあります。
利益の追求だけでなく、同時に社会が抱える問題を行政や政府・NPOと連携することで解消に向かわせる仕組み・システムの総称です。
現代社会で私たちが当たり前に利用している製品やサービスは、過去に誰かが起こしたイノベーションにより誕生したものがほとんどです。ここから過去に、イノベーションが起こった代表的な事例を2つご紹介します。
今やスマートフォン業界でトップシェアを誇るiPhoneは、故スティーブ・ジョブズ氏が起こしたプロダクト・イノベーションの集大成といえるでしょう。従来の「携帯電話」や「ボタン」といった概念を覆し、大画面でシンプルかつ洗練されたデザインを創り出しました。
またプラットフォームと連携することで、より幅広いアプリやコンテンツを利用できるようになり、それまでの携帯電話の常識を根底から書き換えた代表的な事例です。
iPhoneの登場で、あらゆる人の生活が一変したのはもちろん、ビジネスにおいてもスマートフォン開発のモデルとなり、iPhone専用アクセサリーを主要事業に行う企業の誕生など、iPhoneが世界の経済に及ぼした影響は計り知れません。
現代では、無限の可能性を秘めた職業として注目されているYouTubeでの動画配信。
動画が観られることで、動画配信者とプラットフォームを提供する会社の双方に売上が発生し、なおかつ大きな宣伝効果を持つという革新的なビジネスモデル誕生の事例です。YouTubeを模倣した動画配信プラットフォームを開発する企業も増えていますが、YouTubeほどのイノベーションを起こしているプラットフォーム会社は、今のところ出てきていません。
従来の価値観やサービスに捉われず、新しい革新的な価値を提供できる企業には、いくつかの特徴があります。もしあなたが、イノベーションを起こしたい!と考えているのであれば、まずはイノベーションを起こせる企業の要素を持っているかを確認してみるとよいでしょう。
イノベーションは、斬新なアイデアでのみ生まれると思われがちですが、実際は市場のニーズありきで創り出すことも可能です。
自社のノウハウを、より昇華させることで起こす持続的イノベーション、他社や外部と協力することで実現するオープンイノベーションなど、変革は全く新しいものからしか生まれないわけではありません。
現在の市場から変化する先を見据えたうえで、消費者が潜在的に求めているニーズを見抜く洞察力や情報網があれば、どのような企業にもイノベーションを起こせるチャンスは秘められています。常識に捉われず常にアンテナを張り巡らせておくことが重要です。
イノベーションは新しいことへのチャレンジであり、そこには同程度のリスクが隣り合わせで存在しています。失敗すれば、既存事業の売上低下・撤退などに陥る可能性もあるでしょう。
しかし、リスクを恐れてアクションを行わなければ、市場で変革が起きたときには他社に遅れて、優位性を獲得するのは困難になります。変革を目指して新しいチャレンジをするにせよ、リスクヘッジのために現状維持をするにせよ、経営におけるリスクは回避できません。
そうした環境下でイノベーションを起こすためには、アクションが成功したときに得られる利益と失敗した際に生じるリスクを把握し、適切に管理できる判断力・決断力が必要です。
市場の変化や潜在的なニーズを掴むためには、社内外コミュニケーションの円滑さは外すことができない要素の1つです。
イノベーションを起こすためには「イノベーションを起こせる人材」を適切にサポートできる環境づくりが重要であり、そのきっかけは日常の何気ない会話に隠されているケースも少なくありません。
そのため社内外で部門を問わず、自由にコミュニケーションがとれる環境を整えており、情報交換が活発に行われる組織では、イノベーションが起こりやすいといえるでしょう。
逆に、部門間や社外とのコミュニケーションが少なく、閉鎖的な環境下で変革を起こすことは非常に困難です。
サービスや製品が豊富に展開される現代で、市場を確保していくためにはイノベーションは必要不可欠です。イノベーションは、天才的なアイデアがなくとも、市場調査などによるニーズの把握や市場の変化を先駆けてキャッチできれば、会社の規模を問わずチャンスがあります。
オープンイノベーション・クローズドイノベーション・新市場型破壊的イノベーション・ローエンド型破壊的イノベーションなど、多種多様なイノベーションが存在するなかで、自社に最適な方法を選択し戦略を立てることが変革を起こす第一歩です。
現代は働き方改革・DX推進などの要因から、社会全体で早急なイノベーションが求められています。当記事の内容を皆様のイノベーションにご活用いただければ幸いです。
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