エンゲージメント向上
組織開発
離職率とは漠然としたものではなく、計算式によって具体的に算出できる指標です。まずは自社の離職率をチェックしておきましょう。
その上で日本の平均値や、新卒3年以内の離職率などを確認し、自社の現場をチェックすれば、自社の数値が高いのか低いのか、判断できるようになります。
はじめに離職率の算出方法を確認しておきましょう。離職率は以下の式によって算出できます。
離職率=離職者÷現在の常用労働者数×100
例として、2022年1月1日現在の常用労働者数が100人で、年間の離職者が5名だった場合、「5=5÷100×100」となり、2022年度の離職率は5%となります。
日本企業の平均的な離職率は、厚生労働省の「雇用動向調査結果」から見ることができます。このデータから令和3年(2021)の離職率を見ると、男女平均の値が8.1%。うち、パートタイムを除く一般労働者は男女平均で6.3%となっています。これは前年となる、令和2年(2020)の8.6%という数値と比較して0.4ポイント向上しているということになります。自社の離職率を確認する際には、この統計の数値を参考にしてみても良いでしょう。
離職率の中でも気になるのが、新卒者の離職率ではないでしょうか。中途採用もそうですが、新規学卒就職者の求人には高いコストが必要ですし、教育にあたってもかなりのリソースが必要となります。そんな新卒採用の離職率が高くなると人材面やコスト面で、大きなダメージを受けてしまいます。この新卒採用の離職率も厚生労働省のデータで平均値を見ることができますから、比較材料としてチェックしておきましょう。令和2年度の数値では、就職3年以内の離職率は、新規高卒就職者で36.9%。新規大卒就職者で31.2%となっています。
では続いて、業種別の離職率を見ていきましょう。
業種 | 離職率 | |
1 | 宿泊業,飲食サービス業 | 15.3% |
2 | 教育,学習支援業 | 12.2% |
3 | サービス業(他に分類されないもの) | 11.0% |
4 | 生活関連サービス業,娯楽業 | 10.2% |
5 | 情報通信業 | 9.9% |
6 | 医療,福祉 | 8.8% |
7 | 不動産業,物品賃貸業 | 8.1% |
8 | 運輸業,郵便業 | 8.0% |
9 | 電気・ガス・熱供給・水道業 | 7.9% |
10 | 卸売業,小売業 | 7.7% |
11 | 学術研究,専門・技術サービス業 | 6.5% |
12 | 複合サービス事業 | 5.4% |
13 | 製造業 | 5.1% |
14 | 建設業 | 4.8% |
15 | 金融業,保険業 | 4.5% |
16 | 鉱業,採石業,砂利採取業 | 2.9% |
離職率の高い業種のトップ3は
<1>宿泊業,飲食サービス業
<2>教育,学習支援業
<3>サービス業(他に分類されないもの)
という順になっています。
この結果を見てみると、トップ3は法人というよりはどちらかと言えば個人ターゲットのビジネスであるといえるでしょう。一般消費者向けのビジネスは、法人向けのビジネスに比べると安定性は低い傾向があります。さらに就業時間も一般の企業と異なるなど、労働条件がやや厳しめになっているという特徴が考えられます。
逆に離職率の低い業種は16位の「鉱業,採石業,砂利採取業」。16位は若干特殊な業界でありますが、15位の「金融業,保険業」14位の「建設業」13位「製造業」は、一般的に安定性が高い業界とされています。国税庁による「令和元年分民間給与実態統計調査結果」によれば、離職率が15位の「金融業、保険業」の平均給与は、業種別では571万円で2位となっていて、平均給与の高い業界といえるでしょう。さらに、建設業や製造業も、給与面では他の業界よりも平均的に高い業界です。一方離職率の高い「宿泊業、飲食サービス業」の平均給与は、同調査結果では最下位になっており、やはり給与面の格差が離職率に影響していると推測されます。
離職率が高いことには何らかの原因があり、離職率の高い企業には一定の共通点が見受けられます。
先ほど例示した業種別の離職率と給与の関連でも、離職率の高い業種であっても企業によっては低い離職率を保っていることもあります。まずは離職率に対して関心を持ち、何らかの対策を打つことが重要です。ここでは、離職率の高い企業の共通点をご紹介致します。
先ほど説明した通り離職率と給与には、密接な関係が見て取れます。ただし、だからと言って給与体系を急激に変えるわけにもいかないでしょう。では、どうすれば良いのでしょうか。1つは、一人ひとりの評価をしっかりと見直すことです。
実は給与が少ないという不満の裏には、自分が正しく評価されていない、あるいは、自分の労働に対して成果が伴っていないという不満が大きいのです。自分が正しく評価されていないと感じていれば、次第にモチベーションが下がり、最終的には離職につながってしまいます。そのため、まずは評価制度や実際の評価が正しく機能しているか見直してみることをおすすめします。
従業員にとって離職したくなる理由の1つが、「人間関係」にあることはよく知られています。そのため離職率が高い企業というのは、人間関係に問題が発生しやすいという特性を持っています。1日のうちの多くの時間を過ごす職場においての人間関係は、トラブルが起こるとこの上なくストレスが溜まるものです。
人間関係にはコミュニケーションが原因となる場合も多いため、可能な限り良いコミュニケーションができるような環境づくりが求められます。あるいはコミュニケーションのための場や環境を作るということも大切でしょう。
新入社員の場合、業務に早く慣れて仕事に馴染みたいという気持ちが強いものです。そのような時に企業側からしっかりとしたサポートが受けられないと、仕事に対する不安がどんどん膨らんでしまいます。いつまでたっても仕事に慣れないという不安やストレスは、結果として自分がこの会社に向いていないのではという疑問に変わります。
せっかく新入社員を迎えてもしっかりとしたサポート体制がなければ、新入社員の離職が高まってしまう可能性もあるでしょう。入社直後の不安な時期に、安心感をもって働いてもらえるような環境をつくることができているかを今一度きちんと見直してみてはいかがでしょうか。
働き方の見直しによって随分と改善されていることとは思いますが、それでもまだ労働時間が長すぎる企業もあると言われています。長時間労働は体はもちろん精神的な負担も大きく、離職の原因になりやすい条件と言えるでしょう。
仮に強制していないにしても上司がいつまでも会社にいたり、長時間労働をしないときちんと評価されなかったりすれば、否応なく長時間労働しなければいけなくなります。休日出勤や深夜までの残業もまた同様です。そのような勤務時間の習慣が定着してしまっている企業では、従業員が疲れ果ててしまい、離職率が高くなるのも当然と言えるでしょう。
企業におけるハスラメントは最近になって顕在化しやすくなってきましたが、それでもまだ目に見えない場所で横行している場合も多いようです。特に最近ではハスラメントの種類も多岐に渡り、年長の従業員にとっては当たり前に感じてしまっている慣習も、若い従業員にとっては耐え難いハラスメントとして感じることも多いものです。ハラスメントは離職率につながるだけではなく、外部に知られればコンプライアンス的にも大きな問題になる火種を抱えていますから、できるだけすぐに炙り出して正当な処置ができるような仕組みづくりが必要です。
休日休暇に関しては労働基準法によって厳しくルールが作られていますから、違反している企業は本来ならあってはいけないはずです。
しかし現実的に休暇が取りにくいという労働者の声が、全くないというわけでもありません。もし休暇が自分の希望通り取れないとなると、従業員は今の仕事環境に対して不満をもったり疑問を感じたりしてしまうものです。もちろん過剰な休暇を与える必要はありませんが、最低限のラインが守られていないと、休暇が取れない、取りにくいという原因で離職率が高まる可能性もあります。
働き方に対する価値観は新しい世代になるに従って、どんどん変化しつつあります。中高年層にとっては「会社こそ自分のアイデンティティ」と感じているかもしれませんが、現在ではワークライフバランスを重視し、仕事よりも自分の生活を優先する考えをもつ人も増えています。いろいろな価値観を持った従業員の要望を満たせるような、新しい時代の働き方の選択肢を提供することも、従業員の定着には必要な施策といえます。
では、もし現在離職率の高さが問題と感じているのであれば、この離職率を抑えるためにはどんな手段・方法があるのでしょうか。ここから、離職率を抑えるための4つのポイントについて紹介していきましょう。
給与などの待遇面での充実をはかるのであれば、まずは金額的な見直し以前に従業員の評価制度を改めて検討してみてはいかがでしょうか。ひょっとしたら現在の評価制度が、上司や経営者にとって主観的な観点から行われていて、評価される従業員は腑に落ちていないかもしれません。上司だけでなく同僚や部下からの評価も加味した、客観的な評価ができる仕組みづくりもこれからの時代には重要です。
もし離職率を改善しようと考えるのであれば、社内コミュニケーションにも意識を向けるべきでしょう。快適に社内でのコミュニケーションが取れるような仕組みづくりで、従業員の快適さは増し、さらにハラスメントなどのトラブルを透明化できます。フリーアドレスのオフィスや社内SNSなど、社内のスタッフの交流を促すようなコミュニケーションツールを活用すれば、コニュニケーションの活性化につながる可能性があると考えられます。
メンター制度とは新入社員や入社後数年以内の従業員に対して、相談しやすい先輩をアドバイザーとして対応させるというものです。これを制度化しておけば、相談したくても誰にしていいかわからないという状況を避けることができ、仕事に関する不満や不安を取り除けるようになります。さらにメンターになった側も後輩に対してお手本になる姿を見せようと努力するため、どちらに対しても有効な方法となります。単に部署の先輩というだけでなく、幅広いアドバイスができるメンターを登用するのがポイントです。
ワークライフバランスとは、仕事とプライベートのバランスを意味します。仕事一辺倒で自分のプライベートをおざなりにするのではなく、バランス良く配分して充実した生活を送るというのが、ワークライフバランスです。最近ではテレワークも一般化したり、フレックスタイムなどを導入している企業が増えたりと、働き方にも幅が出てきています。このような柔軟性のある仕事環境を提供することも重要です。その結果、従業員の生活に対する満足度が高まれば、生産性も上がり離職率も下がるはずです。
離職率が高いということは定期的に離職する従業員がいるということになり、それは企業にとってさまざまな問題となります。もちろん従業員が定着しないと業務効率が落ちたり、新たな人員を採用するためのコストがかかったりという問題もありますが、そもそも離職されやすい企業の体質に問題があるということを認識するべきでしょう。
その問題は離職率の高さの原因だけでなく、生産性や社員のモチベーションなどにも悪影響を与えている可能性もあります。離職率の改善を機に、自社の問題点を洗い出してより魅力的な企業に変化するきっかけを作ってみてはいかがでしょうか。
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※1〜※4 マーケティングリサーチ機構調べ 調査概要:(※1,※2)2022年4月期 (※3)2022年6月期 (※4)2022年7月期_ブランド名のイメージ調査