チーム・組織づくり
マネジメント
「価値観」とは、物事を評価する際の判断基準です。価値観は、人生のさまざまな場面において「善/悪」「快/不快」「是/非」を決める際のフィルターとなるものであり、意思決定や行動をする際に影響を及ぼします。
なお、価値観は人によって異なり、例えば「安定」を重視する価値観を持つ人もいれば、「挑戦」を重視する価値観を持つ人もいます。「安定を重視する人」と「挑戦を重視する人」との間には、価値観の違いから摩擦・対立が生じることもあるでしょう。
「長年連れ添った恋人や配偶者であっても、価値観の違いから別れるケースがある」ということからも分かるように、価値観は人を形作る根本となるものです。
会社という組織は、多様な価値観を有する人間によって構成されています。そのため、各人を形作る価値観の存在を無視して組織マネジメントを行うことはできません。
所属するメンバーの価値観の異同は、組織に良い影響を与える場合もあれば、悪い影響を及ぼす場合もあります。
同じ価値観を持つ者同士であれば、スムーズに仕事が進みます。しかし、マンネリ化したり、異なる視点からの指摘を受けることができなかったりといった弊害もあるでしょう。それに対し、価値観が異なる者同士で仕事をすると、衝突やストレスが生じることはあるものの、刺激を受ける機会も多くなり、異なる視点からのアプローチが生まれやすくなります。
価値観の違いは、壁を乗り越える力を組織に与えてくれます。似た者同士が集まって、ぬるま湯の中に浸かっている状態では、良いアイデアが閃かないこともあるでしょう。ビジネスを進める際は、異なる価値観を持つ者による刺激やインプットが欠かせません。
価値観は、「友達付き合い」や「恋愛」「結婚」だけではなく、「組織マネジメント」においても重要な要素となります。組織をマネジメントする際は、多様な価値観を持つ人の集まりであることを認識したうえで、ルールや目的を共有しましょう。
組織は、さまざまな価値観を有する人の集まりです。近年は外国人労働者も増加し、これまでよりも社員の多様性が高まっています。そのため、マネジメントを行う際に、部下の価値観がバラバラで収拾がつかないケースもあるでしょう。「組織のメンバーは同じ価値観を持つべき」という考え方でマネジメントを行っていると、ストレスを感じるかもしれません。
しかし、これからも企業が成長し続けていくうえで、ダイバーシティは不可欠の要素です。多様な価値観を有する社員がいなければ、新しいアイデアは生まれません。「価値観というものは各人で異なる」という前提でマネジメントを行いましょう。
アメリカは多様な人種・民族から構成されている国家です。そのため、各人で価値観がバラバラであり、組織を束ねるために以下の2点を重視しています。
・ルールを定め、正誤の境界を明確に示す
・目的を共有し、メンバーの一体感を醸成する
そのうえで、「論理的に説明責任を果たすこと」も求められます。
日本は、外国人労働者が増えているものの、まだアメリカほどの多様性はありません。それでも、アメリカ流の「組織を束ねるための秘訣」は、日本企業でマネジメントを行う場合にも有用なものといえるでしょう。
仕事において「価値観」が重要になる場面は、「人材の教育」「経営戦略の決定や意思決定の場面」「人材の採用や評価」「社員同士の人間関係」「事業のターゲット設定」の5つです。以下、それぞれについて詳しく説明していきます。
人材の教育を行う際は、「企業としてどのような価値観を持っているのか」を示しましょう。価値観は各人で異なるものなので、社員の中には、企業が「正しい」とみなす価値観とフィットしないケースがあるかもしれません。
そのような社員に対しては、「何故、そのような価値観を持っているのか」を丁寧に説明し、「拒絶」ではなく「受け入れ」に導きましょう。会社の価値観と各人の価値観を完全に一致させることは難しいですし、すぐに受け入れることもできないと思います。強制的に同意させるのではなく、根気強く説明をして、理解し・受け入れてもらえる部分を増やしていきましょう。
ビジネスでは、経営戦略の決定など、さまざまな場面で意思決定を行わなければなりません。方向性を決める際は、「企業として、どのような価値観を持っているか」が重要になります。会議などで何かを決める際に依拠するものは、突き詰めていくと「企業の価値観」になるでしょう。
例えば、「売上」と「顧客の満足度」のいずれを優先するのかを決める際に、会社の価値観が関係してきます。
「社風に馴染めない」と感じる社員は、早期に離職をする傾向があります。長く働き続ける人材を確保するためには、「企業としての価値観」と「個人の価値観」が合うかどうかを見極めたうえで採否を決定する必要があります。
また、入社後の人材に対する評価制度においても、「企業の価値観」は重要な要素です。人事評価制度の中に「企業の価値観を理解し、主体的に行動したか」といった項目を組み込みましょう。価値観は永久不変のものではなく、働きかけによって変化していくため、低評価の社員に対して丁寧にフィードバックを行えば、会社の価値観に対する理解・共感を呼び起こすことが可能になります。
社員同士の人間関係においても、価値観が重要な役割を演じます。一人ひとりの価値観の合う/合わないが、働きやすさ・居心地・帰属意識に影響を及ぼします。
価値観は人によって異なるため、「濃密な人間関係が良い」という社員もいれば、「ビジネスライクでドライな関係が良い」という社員もいるでしょう。濃密な関係を好む社員が、良かれと思って、飲み会や旅行などを企画しても、仕事とプライベートを区別することを好む社員にとっては迷惑なことかもしれません。
良好な人間関係を維持するには、価値観の多様性を認める必要があります。互いに異なる価値観を有していることを理解し、自分の価値観を無理やり押し付けない姿勢が求められます。
企業の考える価値観によって、ターゲットにしたい顧客は変わります。どのような顧客を大切にし、増やしていくのかを決定する際に、企業の価値観が関わります。
また、マーケティング手法においても、価値観は重要な要素です。消費者のニーズが多様化するなか、性別や年代、職業、収入といったデモグラフィック属性だけではなく、「どのような価値観を持っているのか」を分析することも、ビジネスにおいては不可欠です。表層的な流行だけを追うのではなく、価値観を捉えることで真のニーズを把握することが可能になります。
「譲れない価値観」の優先順位は、人によって異なります。例えば、「給与の額は高いほうが良い」という価値観と「仕事とプライベートを混同すべきではない」という価値観について、前者を優先する人もいれば、後者を優先する人もいるでしょう。
また、同じ人物であっても、常に同じ価値観を有しているわけではなく、年月の経過と共に変化していくものです。「新卒就職の際は、給与よりも、やりがいを求めていた」という人であっても、結婚したり子どもが生まれたりして、さまざまな費用がかかるライフステージになると、給与の額に対してシビアな感覚を持つようになるかもしれません。
従って、マネジメントを行う際は、社員の価値観を把握する必要があります。具体的には、採用時に適性検査などで価値観を把握したり、入社後の価値観の変化を把握して配属やキャリア設計に活用したりすることが挙げられます。以下、それぞれについて、詳しく説明していきます。
早期離職に至る原因の一つとして、「会社の価値観・社風と合わない」というものがあります。人事担当者の中には、「せっかく良い人材だと思って採用したのに、すぐに辞めてしまった」という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ミスマッチを引き起こす可能性の低減には、「カルチャーフィット採用」の導入が有効です。カルチャーフィット採用とは、「企業のカルチャー(価値観、雰囲気、ビジョンなど)」と「応募者の価値観」の一致度を判断基準に組み込んだ採用方法のことです。近年、新卒採用や中途採用において注目されています。
入社後に教育・研修を通じて価値観が変化するケースもありますが、容易なことではありません。そのため、採用段階で応募者の価値観が組織に合うことを確認してから採用を決める企業が増加中です。カルチャーフィット採用では、応募者に対して適性検査などを実施し、心理的な要素(性格や価値観)をチェックすることになります。
価値観は、生涯に亘って同じままではありません。さまざまな経験を通じて、常に揺れ動いていくものです。「結婚」「出産」といったプライベートにおけるライフイベントの発生や、「役職に就く」「部署を異動する」といった社内における変化に伴って、価値観が変わっていく可能性があります。そのため、採用時に実施した適性検査の結果を使い続けてはいけません。
適切なマネジメントの実施には、入社後も定期的に適性検査などを行って、価値観の変化を把握し続けることが不可欠です。そして、各社員の価値観の変化に基づいて、配属部署・ポジションを変更したり、目標設定を変えたりして、当人のポテンシャルを最大限発揮できる環境を提供しましょう。各社員に適した領域に配置するほうが生産性が向上し、会社全体の成長・業績アップに繋がります。
価値観とは、物事を評価する際の判断基準であり、さまざまな場面において「善/悪」「快/不快」「是/非」を決める際のフィルターとなるものです。友達付き合いや恋愛、結婚といったプライベートにおいて重要な役割を果たしますが、仕事においても無視することができません。
ちなみに、仕事で価値観が重要になる場面として、「人材の教育」「経営戦略の決定や意思決定」「人材の採用や評価」「社員同士の人間関係」「事業のターゲット設定」が挙げられます。さまざまな人間の集まりである組織をマネジメントする際は、社員一人ひとりの価値観に気を配る必要があります。
人材を採用する際は、ミスマッチを防止するために適性検査などで応募者の価値観を把握し、自社と合致しているかどうかを確認してください。また、入社後も定期的に価値観の変化をチェックしましょう。そのうえで、配属先の決定やキャリア設計に活用し、ポテンシャルを最大限発揮できる環境を整えれば、生産性が向上し、会社全体の成長・業績に繋がります。
本記事を読んで、組織マネジメントにおける価値観の重要性を理解していただけましたら幸いです。
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※1〜※4 マーケティングリサーチ機構調べ 調査概要:(※1,※2)2022年4月期 (※3)2022年6月期 (※4)2022年7月期_ブランド名のイメージ調査